alicia keys

 弱冠二十歳にして大成功を収めた、R&B界の大物新人。肌は黒いのにアフリカ系臭くない独特の顔立ちは、母親が白人だからなのだろう。つり気味の三白眼が少し怖いが、黒人の血を引いている割に小さな鼻と唇、そして額から頬・顎にかけて、輪郭のラインが綺麗な美人だ。
 念のために言っておくが、顔が好みだからという理由だけで紹介する訳ではない。ここに書くということは、何より、その歌声や楽曲が素晴らしいからだ。
 70年代のソウル系を意識した曲作りをしながら、サウンドの方は現代の所謂「R&B」風にするというやり方で攻めてくる事に、まず参る。ルーツを大事にし、新しい物も積極的に取り入れようという姿勢が、何と分かりやすく音に表れている事か。マイナーコードを好んで使い、そこに見事に美しいメロディーを乗せる点もまた、とても私好みだ。そして、彼女がおそらくかなり意識しているであろう、歌うたいであると同時にピアノ弾きであるという事も、その楽曲と音を語る上で重要な要素になる。そこには、アイドル的なイメージを取り払い、純粋なミュージシャンとしてやって行きたいのだという意志が伺えるように思う。
 歌声も非常に良い。少しハスキーが入っているだろうか、芯があって渋い低音。透き通っていながらも力強く、ストレートな高音。音域の広さと高い表現力を、曲の中で余すことなく、しかも情感たっぷりに発揮する姿には誰もが惹き付けられる。曲の展開やメロディーによっては、思わずドキッとさせられるほどだ。
 知名度も才能も、ソウルの歌姫と呼ぶに相応しい。それに歌っている時の顔の表情も、また良い(またか)。

2006.11.2

 

 

The Diary of Alicia Keys(2003)

   

 前作で大成功し、高い評価を得たプレッシャーにも負けず、ちょっとした貫禄もつけて出来上がった素晴らしい作品が、このセカンド。
  ファーストと比較するとヒップホップ色がやや薄れ、より歌に重点が置かれているように思う。またサウンド面でも様々な試みが施されていて、曲によって違うプロデューサーを起用し、バリエーション豊かに仕上がっている。シングルカットされた『you don't know my name』と『if i ain't got you』を聴き比べるだけでも、それがよく分かる。
  前者は、ピアノとストリングスをローファイ風にちりばめ、コーラスを多用し、Marvin Gayeを思い起こさせるような70年代テイスト満載な音。プロデューサーは後に有名になったKanye West。コーラスにはJohn Legendの名前も記載されている。
  後者は更に古い時代を意識したようなアレンジで、今度はストリングスではなく管楽器を使っている。ドラムも打ち込みではなく生を録っている。名曲。
 最初のアルバムで成功し、 セカンドでその評価を確実な物にしたAlicia Keys。この二年後にはアンプラグドを発表したが(これも素晴らしい。是非DVDの方を観て欲しい)時期的にそろそろ新作が出ても良い頃だろう。それを楽しみに待てるアーティストだ。

2006.11.2